皆さんはEDHにおいて、『強いジェネラル』と聞いたら何を思い浮かべるだろうか?《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero》と《織り手のティムナ/Tymna the Weaver 》の共闘ジェネラルを思い浮かべる人は多数いるだろう。はたまた、《儀式の大魔導師、イナーラ/Inalla, Archmage Ritualist》が強い、と声を上げる人もいるだろう。目下、食物連鎖系ジェネラルで随一であるところの《初祖スリヴァー/The First Sliver》も魅力的だ。
と、まあ、挙げ始めたら枚挙に遑がないのでここいらで打ち切ろう。これらのジェネラルは、その強力さがある程度認知されているジェネラルだ。それでは、これらのジェネラルが「なぜ強いのだろうか?」と考えたことはないだろうか?「そりゃ書いてあることが強いからだよ」と言われたらそれまでだが、もう少しEDHにおける『ジェネラルとしての強さ』のメカニズムについて考えてみたいと思う。
尚、この記事で取り扱うEDHのレベル感については、『そこそこ力を入れて取り組んでいる』から『cEDH(競技的な姿勢をもって貪欲に勝利を目指すEDH)』までが話の土台にあることを念頭に置いてもらいたい。(例えば投票制度を用いたり怪獣大決戦を望むような、カジュアルで楽しむEDHの場合には、ジェネラルとしての強さを分析する重要性が薄いと考えているため。)
それと、もう一つ。皆さんがお使いのジェネラルが、この記事における『強いジェネラル』に当てはまらなくても、それによって「強くない」と認定する意図の記事ではないことをあらかじめ述べておきたい。あくまでも強さのメカニズムを分析するための学術的(?)記事である。
では、『強いジェネラル』の条件を説明しよう。それは以下の要素を満たすものだと考える。(③について、ユビキタス氏(https://bouzu3.diarynote.jp/profile/)から話を聞いた時の考え方を大いに参考にさせてもらった。この記事に載せることの許可も得ている。)
【①マナコストが軽いこと】
ジェネラルを唱えるためのマナコストが軽いことは明確な強みである。マナコストが軽いことにより、早期のキャストを行える。これにより、ジェネラルの能力を活かしたゲームプランを全体的に前のめりにし、早いゲーム展開を作ることができる。
また、マナコストの軽さはジェネラルの再キャストの容易性にも繋がる。EDHは他のフォーマットと違って、その都度マナコストを+2すれば何度でもキャストし直せるジェネラルという制度が明確なアドバンテージ源として存在している。
マナコストが軽ければ、その分再キャストも容易であり、それはEDH特有のアドバンテージを有効活用できるということの証左である。
ちなみに、ここで言及した軽いコストというのは、1~4マナを指す。2ターン目にはキャストが容易であることが1つのメルクマールである。
【②-A色が多いこと】
①の条件とは若干噛み合わせの悪さがあるが、これも強さの1つである。当たり前であるが、単色より2色、2色より3色、3色より4色・5色、と色が増えるだけ選択できるカードプールが広くなるため、やれることが増える。3色もあれば色が多いと言えるだろう。昨今はカラーパイが緩み、1つの色でできることが増えたため、3色集まればほとんどのことはできるのではないだろうか。
【②-B色が強いこと】
勿論、色の組み合わせも強さの基準になる。これはよく論じらている話なので詳しくは述べないが、色を単体で見た場合だと強さの序列は青≧緑≧黒>赤>白であるし(ここは異論があると思うが今回はその体で進める)、組み合わせで見た場合は青緑>緑黒≧青黒>…(中略)…>赤白である。中略したのは詳しくは述べないためである。要は青緑黒が強く、補助色としては白も優秀である。
【③ジェネラルとしての力を発揮しやすいこと】
下記の表において上に近いほど強力な能力である。ちなみにここから多用する『仕事をする』の意味するところは大雑把に言うと『盤面または手札アドバンテージが取れること』または『大量のマナを生むこと』が該当する。
である。
①と②と③は独立した項目ではなく、絡み合って『ジェネラルとしての強さ』を形成している。どういうことか、もう少し掘り下げていこう。
そのためにまず③について、実際に強力と認識されているジェネラルにどのように当てはまっているか確認したい。
尚、ジェネラルの強さの序列を体系化した資料として、皆さんおなじみのTAPPED OUTのTier List(http://tappedout.net/mtg-decks/list-multiplayer-edh-generals-by-tier/)を用いる。海外の環境と日本の環境は当然違うものであり、この資料を妄信するべきではないが、資料としての一定の信頼度があることは確かだろう。
さて、この資料のジェネラル達を見ていると、《結界師ズアー/Zur the Enchanter》や《放浪の吟遊詩人、イーサーン/Yisan, the Wanderer Bard》は③の視点から見ればイマイチであることに気が付く。どちらも
・ジェネラルの能力がタップ能力の起動型能力である、または戦闘を介することで能力が誘発する等、召喚酔いに影響する
に当てはまるためである。しかし、彼らが強力であるとされているのは、召喚酔いが解けた時のリターンが大きいことと、やはり①を満たすというところが大きい。それだけマナコストの軽さは強さに影響する。召喚酔いもゲーム序盤のタイミングでキャストしておけば、ジェネラルが生きて帰ってくる確率が高くなるからだ。
逆に①を満たさなくとも、②や③に当てはまれば強力であるという例が《カーの空奪い、プローシュ/Prossh, Skyraider of Kher》である。
共闘システムは、単体が軽くて(①)、色を重ねないことで最大4色まで扱える色を増やすことができる(②)ため、かなり優れたシステムといえる。そして《織り手のティムナ/Tymna the Weaver 》は
・ジェネラルの能力が、本体以外のカードによって誘発させることができる誘発型能力である
に相当し、《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero 》は
・ジェネラルの能力が召喚酔いに影響しない起動型能力である
に相当する。単体で能力が優秀である(③)も満たすため、①②③全ての条件に一致するといえる。これが《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero》と《織り手のティムナ/Tymna the Weaver 》の共闘ジェネラルが極めて強力な理由である。
効果が派手なため、性能を強く見積もられがちなジェネラルも存在するが、それらも今回の手法にのっとって分析してみるとよい。例えば《悟った達人、ナーセット/Narset, Enlightened Master》は効果が派手で強力に見えるが、マナコストが重くて(①を満たさない)、召喚酔いに影響される(③を満たさない)ため、ほかの①や③を満たすジェネラルがいるならばそちらをより警戒するべきである。
①や③を満たすジェネラルは一見すると地味な効果であることが多々あり、ジェネラルの強度を見間違える原因である。
冒頭で述べたように当てはまらないジェネラルを強くないと言いたいわけではない。卓のジェネラル間のパワーバランスをこの分析方法によって正しくとらえることで、不必要な除去やカウンターを使用せずに、より一段階上のプレイングを行えるのではないだろうか。
これがこの記事を書いた狙いであり、願いである。
と、まあ、挙げ始めたら枚挙に遑がないのでここいらで打ち切ろう。これらのジェネラルは、その強力さがある程度認知されているジェネラルだ。それでは、これらのジェネラルが「なぜ強いのだろうか?」と考えたことはないだろうか?「そりゃ書いてあることが強いからだよ」と言われたらそれまでだが、もう少しEDHにおける『ジェネラルとしての強さ』のメカニズムについて考えてみたいと思う。
尚、この記事で取り扱うEDHのレベル感については、『そこそこ力を入れて取り組んでいる』から『cEDH(競技的な姿勢をもって貪欲に勝利を目指すEDH)』までが話の土台にあることを念頭に置いてもらいたい。(例えば投票制度を用いたり怪獣大決戦を望むような、カジュアルで楽しむEDHの場合には、ジェネラルとしての強さを分析する重要性が薄いと考えているため。)
それと、もう一つ。皆さんがお使いのジェネラルが、この記事における『強いジェネラル』に当てはまらなくても、それによって「強くない」と認定する意図の記事ではないことをあらかじめ述べておきたい。あくまでも強さのメカニズムを分析するための学術的(?)記事である。
では、『強いジェネラル』の条件を説明しよう。それは以下の要素を満たすものだと考える。(③について、ユビキタス氏(https://bouzu3.diarynote.jp/profile/)から話を聞いた時の考え方を大いに参考にさせてもらった。この記事に載せることの許可も得ている。)
【①マナコストが軽いこと】
ジェネラルを唱えるためのマナコストが軽いことは明確な強みである。マナコストが軽いことにより、早期のキャストを行える。これにより、ジェネラルの能力を活かしたゲームプランを全体的に前のめりにし、早いゲーム展開を作ることができる。
また、マナコストの軽さはジェネラルの再キャストの容易性にも繋がる。EDHは他のフォーマットと違って、その都度マナコストを+2すれば何度でもキャストし直せるジェネラルという制度が明確なアドバンテージ源として存在している。
マナコストが軽ければ、その分再キャストも容易であり、それはEDH特有のアドバンテージを有効活用できるということの証左である。
ちなみに、ここで言及した軽いコストというのは、1~4マナを指す。2ターン目にはキャストが容易であることが1つのメルクマールである。
【②-A色が多いこと】
①の条件とは若干噛み合わせの悪さがあるが、これも強さの1つである。当たり前であるが、単色より2色、2色より3色、3色より4色・5色、と色が増えるだけ選択できるカードプールが広くなるため、やれることが増える。3色もあれば色が多いと言えるだろう。昨今はカラーパイが緩み、1つの色でできることが増えたため、3色集まればほとんどのことはできるのではないだろうか。
【②-B色が強いこと】
勿論、色の組み合わせも強さの基準になる。これはよく論じらている話なので詳しくは述べないが、色を単体で見た場合だと強さの序列は青≧緑≧黒>赤>白であるし(ここは異論があると思うが今回はその体で進める)、組み合わせで見た場合は青緑>緑黒≧青黒>…(中略)…>赤白である。中略したのは詳しくは述べないためである。要は青緑黒が強く、補助色としては白も優秀である。
【③ジェネラルとしての力を発揮しやすいこと】
下記の表において上に近いほど強力な能力である。ちなみにここから多用する『仕事をする』の意味するところは大雑把に言うと『盤面または手札アドバンテージが取れること』または『大量のマナを生むこと』が該当する。
・威光能力:もはやジェネラルを唱えなくてもよい。ゲーム開始時からジェネラルの能力を発揮できる。
例 《儀式の大魔導師、イナーラ/Inalla, Archmage Ritualist》
・唱えた時点で能力が誘発する:唱えるだけで仕事をする。ジェネラルが打ち消されようがお構いなしである。
例 《初祖スリヴァー/The First Sliver》、《カーの空奪い、プローシュ/Prossh, Skyraider of Kher》
・ジェネラルの能力がETBで誘発する:戦場に着地した時点で仕事をする。直後に除去をされてもひとまずやるべきことをやった状態にできる。
例 《不屈の巡礼者、ゴロス/Golos, Tireless Pilgrim》
・ジェネラルの能力が常在型である:戦場に出ているだけで効果を発揮する。1ターン内で行える回数に制限がかけられている行動を増やす等強力なものが多い。
例 《反体制魔道士、ケス/Kess, Dissident Mage》、《ギトラグの怪物/The Gitrog Monster》
・ジェネラルの能力が召喚酔いに影響しない起動型能力である:出たターンに能力を起動できることが条件。マナを支払えば起動できたり、サクリ台としての能力が当てはまる。
例 《胞子の教祖、ゲイヴ/Ghave, Guru of Spores》
・ジェネラルの能力が、本体以外のカードによって誘発させることができる誘発型能力である:例えば本体以外のクリーチャーが戦闘を挟むことによってサボタージュ能力を誘発させる等。
例 《織り手のティムナ/Tymna the Weaver 》、《永遠衆、ネヘブ/Neheb, the Eternal 》
・ジェネラルの能力がタップ能力の起動型能力である、または戦闘を介することで能力が誘発する等、召喚酔いに影響する:出たターンに仕事が出来ず、生きて1周して初めて仕事をする。
例 《放浪の吟遊詩人、イーサーン/Yisan, the Wanderer Bard》
・パワーモリモリの殴りジェネラル:読んで字のごとく。
・バニラ、フレンチバニラ:レジェンド (エキスパンション)に多い。
である。
①と②と③は独立した項目ではなく、絡み合って『ジェネラルとしての強さ』を形成している。どういうことか、もう少し掘り下げていこう。
そのためにまず③について、実際に強力と認識されているジェネラルにどのように当てはまっているか確認したい。
尚、ジェネラルの強さの序列を体系化した資料として、皆さんおなじみのTAPPED OUTのTier List(http://tappedout.net/mtg-decks/list-multiplayer-edh-generals-by-tier/)を用いる。海外の環境と日本の環境は当然違うものであり、この資料を妄信するべきではないが、資料としての一定の信頼度があることは確かだろう。
さて、この資料のジェネラル達を見ていると、《結界師ズアー/Zur the Enchanter》や《放浪の吟遊詩人、イーサーン/Yisan, the Wanderer Bard》は③の視点から見ればイマイチであることに気が付く。どちらも
・ジェネラルの能力がタップ能力の起動型能力である、または戦闘を介することで能力が誘発する等、召喚酔いに影響する
に当てはまるためである。しかし、彼らが強力であるとされているのは、召喚酔いが解けた時のリターンが大きいことと、やはり①を満たすというところが大きい。それだけマナコストの軽さは強さに影響する。召喚酔いもゲーム序盤のタイミングでキャストしておけば、ジェネラルが生きて帰ってくる確率が高くなるからだ。
逆に①を満たさなくとも、②や③に当てはまれば強力であるという例が《カーの空奪い、プローシュ/Prossh, Skyraider of Kher》である。
共闘システムは、単体が軽くて(①)、色を重ねないことで最大4色まで扱える色を増やすことができる(②)ため、かなり優れたシステムといえる。そして《織り手のティムナ/Tymna the Weaver 》は
・ジェネラルの能力が、本体以外のカードによって誘発させることができる誘発型能力である
に相当し、《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero 》は
・ジェネラルの能力が召喚酔いに影響しない起動型能力である
に相当する。単体で能力が優秀である(③)も満たすため、①②③全ての条件に一致するといえる。これが《トリトンの英雄、トラシオス/Thrasios, Triton Hero》と《織り手のティムナ/Tymna the Weaver 》の共闘ジェネラルが極めて強力な理由である。
効果が派手なため、性能を強く見積もられがちなジェネラルも存在するが、それらも今回の手法にのっとって分析してみるとよい。例えば《悟った達人、ナーセット/Narset, Enlightened Master》は効果が派手で強力に見えるが、マナコストが重くて(①を満たさない)、召喚酔いに影響される(③を満たさない)ため、ほかの①や③を満たすジェネラルがいるならばそちらをより警戒するべきである。
①や③を満たすジェネラルは一見すると地味な効果であることが多々あり、ジェネラルの強度を見間違える原因である。
冒頭で述べたように当てはまらないジェネラルを強くないと言いたいわけではない。卓のジェネラル間のパワーバランスをこの分析方法によって正しくとらえることで、不必要な除去やカウンターを使用せずに、より一段階上のプレイングを行えるのではないだろうか。
これがこの記事を書いた狙いであり、願いである。
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