【レンタロウのグルメ】タイカレーについて【第一回(最終回)】
2020年5月18日 グルメ コメント (1)皆さんはカレーが好きだろうか?
大多数の人間の答えが、容易に予想できる質問だ。
無論、私も、その予想通り「好き」と答える。
しかし、一口に『カレー』といっても、様々な種類のカレーが世の中には存在する。冒頭の質問に対して、日本式カレー、あの魅惑の焦げ茶色のルーと白いご飯のセットを思い浮かべた人は多いだろう。しかし今回、私が話題として取り上げたいのは、そのカレーではない。
私が今回、更新が4カ月間止まって方々が石化し始めていたDiaryNoteを、わざわざ再開してまで紹介したかったカレーは、ずばりタイトルにある『タイカレー』である。
実際に食べたことはなくとも、耳にしたことがある人は多いはずだ。
『タイカレー』。
「ああ、タイのカレーなんだな」と、見れば即座に認識できる字面。聞けば瞬時に理解できる響き。そう、タイの代表的な料理の一つである。――まあ、実のところ、『タイカレー』という総称は、日本人が勝手につけたものであって、正確にはカレーではないのではあるが――。細かい分類を持ち出すと、カレーの一種という体で進めた導入部分を自分で崩すことになるので、ひとまず次へ行こう。
タイカレーは、『レッドカレー』『グリーンカレー』『イエローカレー』等の種類に分かれる。私はこの中から『グリーンカレー』について語りたい。
皆さんの中にも、タイカレー=グリーンカレーという図式があるのではないだろうか。レッドカレーやイエローカレー派の人間から怒られそうだが、ここは私の嗜好を勝手に綴る場所であるので、二者について語りたい方はぜひご自分で思いの丈をぶつけてみてはどうだろう。
前置きが長くなった。私は見た目や味について語りたいである。
では、ひとまずこのグリーンカレーを目の前にしてみよう。グリーンカレーは、その名に恥じぬ、見て分かるほどに緑がかった色が特徴である。これは、青いトウガラシやパクチー等を材料に用いていることに由来する。この緑色がグリーンカレーの「ただならぬ者」感を醸し出すのに一役買っているのだ。本来、緑色は人間にとって安らぎを与える色とされている。しかしどうだろう、このグリーンカレー、見ていて安らぐだろうか?どこか、これから不穏なことが起こることを予感させる風貌ではないだろうか。そう、これから口の中で激しい戦いが行われるのである。いざ、実食へ――。
まずは右手にスプーンを持とう。
「やってやろうじゃないの…」
そう思いながら、一掬いし、口へ運ぶ。
「――甘い?」口に含んだ瞬間、そう思うはずだ。ココナッツミルクの芳醇な甘み。昨今のグルメ番組で多用される、もはや『旨味』と混同されがちなぼやけた意味の『甘さ』ではなく、「『甘い』から『甘い』というのだ」と表現するべき味。
「あの不穏な緑は何だったのか。拍子抜けか?」そう思った次の瞬間、『辛さ』が襲い掛かってくる。不意討ちである。さっきまで甘かったではないか。青唐辛子特有の容赦のない辛さがとめどなく押し寄せる。
「これは辛いな…」。思考が辛さで上書きされる。だが、ここで水を飲んではいけない。食べている者はこの辛さを享受し、次の一口を進める義務がある。口の中は火事のようになり、助けを求める。ここに次の一口が運ばれたとき、ココナッツミルクの風味が楽園のように口に広がるのである。そしてまた次に、辛さの火が楽園に放たれる。この繰り返しだ。
そう、この甘さから辛さへ、二段階で波打つ味覚のコントラストがタイカレーの醍醐味である。甘辛い食べ物なら日本にもいくらでも存在するであろう。しかしタイカレーは『甘辛い』のではない。『甘く』て『辛い』のだ。日本の食べ物では決して味わえない、異国の情緒にあふれた味覚なのだ。
食べ進めていくうちに、この別々で行動でする『甘さ』と『辛さ』が、最終的に混然一体になる。その瞬間、あなたは頭の中でタイの地に舞い降りているだろう。ああ、東南アジアの風が吹く――。
「ごちそうさまでした。」
スプーンを置き、ここでご褒美の水を飲む。口の中の余韻を流し、十数分間の東南アジアの旅を終わらせよう。
束の間の非日常は幕を閉ざし、また日常へと歩み始まる。
なに、また旅をしたくなったら、頼めばいいのだ。グリーンカレー、この妖しくも美しい緑色の一皿を。
大多数の人間の答えが、容易に予想できる質問だ。
無論、私も、その予想通り「好き」と答える。
しかし、一口に『カレー』といっても、様々な種類のカレーが世の中には存在する。冒頭の質問に対して、日本式カレー、あの魅惑の焦げ茶色のルーと白いご飯のセットを思い浮かべた人は多いだろう。しかし今回、私が話題として取り上げたいのは、そのカレーではない。
私が今回、更新が4カ月間止まって方々が石化し始めていたDiaryNoteを、わざわざ再開してまで紹介したかったカレーは、ずばりタイトルにある『タイカレー』である。
実際に食べたことはなくとも、耳にしたことがある人は多いはずだ。
『タイカレー』。
「ああ、タイのカレーなんだな」と、見れば即座に認識できる字面。聞けば瞬時に理解できる響き。そう、タイの代表的な料理の一つである。――まあ、実のところ、『タイカレー』という総称は、日本人が勝手につけたものであって、正確にはカレーではないのではあるが――。細かい分類を持ち出すと、カレーの一種という体で進めた導入部分を自分で崩すことになるので、ひとまず次へ行こう。
タイカレーは、『レッドカレー』『グリーンカレー』『イエローカレー』等の種類に分かれる。私はこの中から『グリーンカレー』について語りたい。
皆さんの中にも、タイカレー=グリーンカレーという図式があるのではないだろうか。レッドカレーやイエローカレー派の人間から怒られそうだが、ここは私の嗜好を勝手に綴る場所であるので、二者について語りたい方はぜひご自分で思いの丈をぶつけてみてはどうだろう。
前置きが長くなった。私は見た目や味について語りたいである。
では、ひとまずこのグリーンカレーを目の前にしてみよう。グリーンカレーは、その名に恥じぬ、見て分かるほどに緑がかった色が特徴である。これは、青いトウガラシやパクチー等を材料に用いていることに由来する。この緑色がグリーンカレーの「ただならぬ者」感を醸し出すのに一役買っているのだ。本来、緑色は人間にとって安らぎを与える色とされている。しかしどうだろう、このグリーンカレー、見ていて安らぐだろうか?どこか、これから不穏なことが起こることを予感させる風貌ではないだろうか。そう、これから口の中で激しい戦いが行われるのである。いざ、実食へ――。
まずは右手にスプーンを持とう。
「やってやろうじゃないの…」
そう思いながら、一掬いし、口へ運ぶ。
「――甘い?」口に含んだ瞬間、そう思うはずだ。ココナッツミルクの芳醇な甘み。昨今のグルメ番組で多用される、もはや『旨味』と混同されがちなぼやけた意味の『甘さ』ではなく、「『甘い』から『甘い』というのだ」と表現するべき味。
「あの不穏な緑は何だったのか。拍子抜けか?」そう思った次の瞬間、『辛さ』が襲い掛かってくる。不意討ちである。さっきまで甘かったではないか。青唐辛子特有の容赦のない辛さがとめどなく押し寄せる。
「これは辛いな…」。思考が辛さで上書きされる。だが、ここで水を飲んではいけない。食べている者はこの辛さを享受し、次の一口を進める義務がある。口の中は火事のようになり、助けを求める。ここに次の一口が運ばれたとき、ココナッツミルクの風味が楽園のように口に広がるのである。そしてまた次に、辛さの火が楽園に放たれる。この繰り返しだ。
そう、この甘さから辛さへ、二段階で波打つ味覚のコントラストがタイカレーの醍醐味である。甘辛い食べ物なら日本にもいくらでも存在するであろう。しかしタイカレーは『甘辛い』のではない。『甘く』て『辛い』のだ。日本の食べ物では決して味わえない、異国の情緒にあふれた味覚なのだ。
食べ進めていくうちに、この別々で行動でする『甘さ』と『辛さ』が、最終的に混然一体になる。その瞬間、あなたは頭の中でタイの地に舞い降りているだろう。ああ、東南アジアの風が吹く――。
「ごちそうさまでした。」
スプーンを置き、ここでご褒美の水を飲む。口の中の余韻を流し、十数分間の東南アジアの旅を終わらせよう。
束の間の非日常は幕を閉ざし、また日常へと歩み始まる。
なに、また旅をしたくなったら、頼めばいいのだ。グリーンカレー、この妖しくも美しい緑色の一皿を。